非上場株式の売却方法

更新日:2021年10月1日 株式売却
河合弘之

監修弁護士
河合 弘之

非上場株式の売却方法

(保有する非上場株を売却したいが、苦労しているパターン)

非上場株を保有していて、売却をしたいと考えているのに、どうしようもならなくて苦労している方々の背景事情は様々です。かつて経営陣の一員だったが、退職後、会社との関りがなくなってしまったので売却したい。祖父が、父が創業した会社の株式を相続したご子息の株主。 もう何代にもわたり親族で経営しているが、親戚といえども代を経るにつれて縁遠くなってしまった。このまま保有株を子供に相続させたくないので、売却を検討されている方も多くいらっしゃると思います。(なかには会社と縁と切ってしまいたいと思っている方も) その際に大きなハードルに直面するのが非上場株式の売却です。ここでは、困難な場面に出くわすことも多い非上場株式の売却方法や、懸念点についてご紹介します。

1. 非上場株式とは何か

「株式」には、証券取引所で取引されている上場株式と、開かれた市場での取引が行われていない非上場株式の2種類が存在します。市場で継続的に取引され、日々の価格が変動している上場株式とは異なり、非上場株式の売却には、さまざまな困難が伴うケースが見受けられます。

2. 非上場株式の売却が難しい理由

市場での取引が行われていない非上場株の売却や現金化には、さまざまなハードルが存在します。

A氏が、保有する非上場株式を売却したい場合には、まずは経営権を握る会社側に取引を持ちかけるケースが一般的でしょう。しかし、会社側はA氏の売却意向を聞いたからといって、それに応じる義務はありません。つまり、A氏がいくら強い売却の意志があっても、経済的に困窮した事情があっても、A氏が思うところの正当な理由がありそれを主張したとしても、会社側には買取義務がなく、(法的な強制力もしくは会社側の好意的な対応ががない限り)A氏は不本意ながらも、株式を保有し続けるをえない状況に追い込まれてしまいます。

B社が組織再編や事業譲渡、他社との合併といったイベントに直面しない限り、株主総会の特別総会に基づく買取請求権の行使が期待できる場面も発生しないため、A氏の株式売却には、極めて高いハードルが立ちはだかることとなります。

結果として、仮に会社側が交渉に応じてくれたとしても、常に会社側が優位な展開を余儀なくされてしまうことがほとんどです。

その代表例が、取引価格です。「非上場株式」の取引価格は、市場に公開されている同業他社の取引額や配当金をもとに株価を決める「類似業種比準方式」、会社の資産状況を元にする「純資産価額方式」、株主配当金を基準にした「配当還元方式」などの算定方法が存在します。相続税の課税額も、これらの株式価格を元にして決められます。一定の尺度自体はあるのです。

ところが、会社側の胸先三寸、意向次第という不利な立場で交渉に臨むA氏は、B社に保有株式の現在価値を全く反映しないを価格を提示されても、抵抗することができません。 いくら理論上適正な価格を訴えても、会社側に買取義務がない限り、机上の空論となってしまうのです。 結果的に残念無念な気持ちを押し殺し、安く買い叩かれることを受け入れるか。または、不本意な想いを抱えながら相続税を支払い子供に相続せざるをえない状況に追い込まれます。【なんで会社からは安値の買い叩き価格しか提示されないのに、相続税の算定には相続税課税評価額という高い株価で計算されるのか!あまりに理不尽ではないか!! 売れない株を、巨額の相続税払ってまで子供に渡して、それでは禍の先送りではないか! 子供から孫への相続の時はどうなる?俺の代で決着をつけるべきではないか!? たとえ今回、高い相続税を払って子供に引き継いでも、将来今の相続税評価額以上で売れる保証はどこにもないぞ・・・。会社側の強硬な姿勢がいずれ覆るとはとても思えない。でもだからといって会社のいいなりになるのはあまりに悔しいではないか!足元を見てきている相手に、服従するのはあまりにも悔しいではないか!!】という複雑な心情で苦しむ方が多いのはこの点です。

多くの参加者が公の取引市場で自由に売買できる、上場株式であれば「すべては価格に宿る。」ものです。会社の業績、将来性、業界特性、景気、昨今のニュースなどが織り込まれ、多くの市場参加者の多面的な考察が集約された結果が市場で取引されている「売買価格」なのだと言われても納得することもできます。(例えその売買価格が将来において変動し、結果としてああすればよかったと振り返ることがあっても。その時点ではそうであったと反省することはあっても)

非上場株の取引は、売り手、買い手、二者の当事者のみの相対で、双方が合意する価格であれば取引は成立します。双方の合意という点では上場株式も同じですが、当事者以外には市場参加者がおらず、合理的な価格形成のもとに取引がされているか?というと必ずしもそうではないのが実情です。 売り手・買い手が価格を決めるにあたり、双方が同程度の判断材料を持っているかというと、やはりそうではなく、圧倒的に会社側が情報量において勝ります。つまり、不公正な取引が成立しやすい「情報の非対称性」が存在するのです。

  • 上場株式:多くの参加者によって価格形成される美人投票⇒合理的な価格形成がされやすい。
  • 非上場株式:売り手、買い手の当事者間のみで、他の市場参加者ががいない⇒当事者間のみで決定するため、非合理的な価格になりがち。

また、売り手・買い手の立場の優位性が著しく偏っているのが非上場株式取引における難しさであり、問題点だと思います。

私、河合弘之はこの交渉における優位性の偏りを正し、問題解決ができるよう支援をしたく願っています。

3. 非上場株式を保有するメリットやデメリット

所有株数に応じた正当な配当が得られているケースや、A氏がB社に対して問題なく株式の譲渡ができる環境が整っているのであれば、譲渡がしにくい非上場株式を保有していても、一定のメリットがあると言えるでしょう。

ですが、株式を保有していても、納得のゆく配当を行わない非上場企業も多いでしょう。 同族会社の場合、経営もオーナーシップも一部の親族が握っており、少数株主への配当よりも、オーナー社長ほか一族への役員報酬や退職金を優先しているケースは当たり前のように散見されます。そのためB社の少数株主を続けているA氏が、本来受け取れる配当金も得られないまま、しぶしぶ株式の保有を続けている状況も、実際には多く見られます。

4. 少数株でも権利行使できる!

「株式会社」の制度では、持株比率が高まるほど、さまざまな権限が与えられ、その分安定した経営を行いやすくなるため、経営者が株を多く保有することは、大きなメリットにもなります。 それが資本主義といえばそれまでで、裏を返せば、少数株主の影響力を抑えるための施策ともいえます。 では少数株主は何もできないのでしょうか? ここでは保有比率に応じて行使できる権利についてふれます。

株主に認められた権利の一つに、会計帳簿閲覧請求権があります。「会計帳簿」とは、会社の財産に影響を及ぼす資金の動きを記載した書類のことを指し、総勘定元帳、現金出納帳、仕訳帳などがこれに該当します。

会計帳簿の閲覧請求が出来る主な書類
会計帳簿:総勘定元帳、現金出納帳、仕訳帳など
関連する資料:会計帳簿作成の材料となった資料(契約書、領収書、伝票など)

株主が以下のような一定の条件を整えた場合には、会社に対して会計帳簿の閲覧を請求できるようになります。
会計帳簿閲覧請求に必要な条件
総株主の議決権の3%以上、もしくは
発行済み株式の100分の3以上有する株主

3%以上の株式を保有する株主が有する権利ですが、3%未満の株主であっても、複数人で3%以上の株式を有する場合には、会計帳簿の閲覧を請求権することが可能になります。

(例)A株式会社(発行株数100株)
B氏:3株保有
C氏:1株保有
D氏:2株保有

B氏 → 一人でも閲覧請求が可能
C氏・D氏 → 他の株主と共に、閲覧請求が可能

会計閲覧請求権を行使したい株主は、その理由や閲覧を希望する書類を具体的に記載し、書面で提出する必要があります。

会計閲覧請求に必要なもの
会計帳簿を閲覧請求する具体的な理由
閲覧、または謄写を希望する帳簿(具体的に記載)
閲覧や謄写にかかる費用(株主負担)

株主から、会計帳簿の閲覧を請求をされた会社は、正当な理由がない限りは、応じなければならないとされていますが、実際には不当に拒否するケースも見られます。
「開示してほしければ裁判所を通じてするよう」と平気に言い放つ、強硬な姿勢の会社も、本当に実在するのです。もし、そんな場合は、裁判所に対して「会計帳簿等閲覧謄写請求の仮処分」の手続きを行うことができます。
単にめんどうで応じないのか、株主軽視の姿勢が明確なのか、何か帳簿閲覧を避けたい理由があるのか・・・・いずれにせよ、会社の運営に不適切な部分があるのであれば、なぜそのようなことをしているのか?どのような意思決定プロセスのもとにそれがなされているのか?取締役の責任を追及することが会社のガバナンス向上につながるものかと思います。
もし会社を大胆に私物化し、株主に著しい損害を与えることがなされているのであれば、それは株主代表訴訟の対象となりうる違法行為が横行している可能性もあるかもしれません。

4-1. 持ち株比率が1%を超える株主

取締役会設置会社における株主総会の議題提案権(定款で定めがない限り、6か月以上の保有が必要)

4-2. 持ち株比率が3%を超える株主

株主総会の招集請求権(定款で定めがない限り、6か月以上の保有が必要)、会計帳簿の閲覧及び謄写請求権

4-3. 持ち株比率が3分の1を超える株主

株主総会の特別決議を単独で否決する権限

4-4. 持ち株比率が2分の1を超える株主

株主総会の普通決議を単独で可決する権限(取締役の選任決議、解任決議を含む)

4-5. 持ち株比率が3分の2を超える株主

株主総会の特別決議を単独で可決する権限(会社法309条2項)(特定の株主からの自己株式の取得に関する事項の決定、非公開会社における募集株式の募集事項の決定、事業譲渡(会社法467条1項)、合併や会社分割といった組織変更の決定の決議を含む)

5. 非上場株主の売却方法

もし、A氏がB社株式の売買を検討している場合には、例えば取引関係の開始、もしくは強化を視野に入れて「株式を取得したい」もしくは「持株比率を高めたい」など何らかの意向を持つ株主を見つけ、A氏の持分を売却する方法は理想的な流れのひとつです。この場合、A氏が、売買取引したい相手を見つけ、B社に対して譲渡承認請求を行い、承認が得られれば取引は成立します。しかしながら、B社に事業シナジーを期待して投資する方が、常に存在しているとは限りません。
話はかわりますが、国内外には未上場会社を専門的に投資対象としている投資家も数多く存在します。業種、事業規模、持ち分比率、投資金額の規模、投資の時間軸。各々のファンドは独自のスコープをもって投資対象を選定します。ファンドに資金を提供している投資家への期待利回りももそれぞれ異なります。プライベート・エクイティという投資スタイルですが、世界では株式・債券など一般的な資産クラスと一線を画す代替案としてオルタナティブ投資と呼ばれる領域です。日本の個人投資家にはまだまだなじみはありまませんが、世界では名だたる年金、大学の基金ほか機関投資家の巨額の資金が運用されています。未上場株式を取得した後、会社側に改善の提案をし、企業業績の向上後、その対価として売却益を享受するなど、それぞれのファンドがユニークな投資戦略をもっています。各々のファンドの投資戦略に合致して、はじめてこれらの機関投資家への売却は叶いますが、これまで国内投資家の誰もに見向きされなかった日本の未上場株への熱視線を感じています。

道は、限られているように思われがちですが、実際のところ、これまで動いていなかった少数株主の皆様も相応にいらっしゃるかと存じます。どう動いていいのやらわからなかったから、という方も多いかと存じます。弁護士河合弘之共に道筋を探し、共に動き、共に解決の糸口を探すお手伝いができればと願っています。 道は、険しいでしょうが、道がないわけではありません。お一人で悩まずに、是非一度でもご相談ください。道を一緒に探してみようではありませんか。伴走させていただければと願っています。

6. 非上場株主の売却時の注意点

A氏がB社株式を保有したまま死亡し、相続が発生したとします。この場合で、A氏の「同族」(仮に「C氏」とします。)が、B社の株式を保有している場合には、注意しなければならないポイントがあります。

例えば、A氏がC氏の親族であり、A氏とC氏が持つ株式の議決権が併せて50%超である場合、A氏はいわゆる「同族株主」となります。この場合に、A氏の株式の議決権比率が5%を超えているときは、B社株式について、相続の際に課される税金の評価方法が異なることになるのです。実際の納税額が大幅に異なる決定的な要因になりますので、もしよろしければお問い合わせください。

*株主名簿をお持ちでしたらお知らせください。もしお持ちでなければ、株主構成をお知らせください。


7. 譲渡制限株式の場合

非上場企業の株式には、好ましくない者が株主となることや、株式の保有関係を複雑なることを防ぐために、「譲渡制限」を設けているケースがほとんどではないでしょうか。株式を譲渡する際には、発行する会社の承認が必要とすることが定款に定められているため、株主間の同意だけでは、取引が完全には成立しません。完全には?とはどういうことか?

詳しくはこちらへお問い合わせください。


8. まとめ

非上場株式の売却にあたっては、関係する人間の閉鎖性や、法務的な手続きの煩雑さゆえにさまざまなハードルに直面することがあります。

さくら共同法律事務所ではご相談を受け付けています。大きなトラブルに発展する前に、ぜひ専門家へのご相談を検討されてみてはいかがでしょうか?

株式の売却、相続に関することならお気軽にご相談ください。

弊所は非上場株や譲渡制限株の売却ができず苦しんでいる株主へのサポートや、相続税の支払いの為、発行会社へ買取りを打診したが「応じない」「不当に安い価格を提示する」企業への交渉を得意としています。

相談は無料ですのであなたの今のお悩みをまずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

河合弘之
河合 弘之

様々な難事件、大事件への対処を得意としており、強大な敵や困難にも立ち向かい成果を挙げ続けた実績のある「逆襲弁護士」です。

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