譲渡承認請求とは?具体的な手続きの流れを解説

更新日:2021年11月24日 株式売却
河合弘之

監修弁護士
河合 弘之

譲渡承認請求とは?具体的な手続きの流れを解説

株式の譲渡を行うにあたり、会社の承認が必要となる「譲渡制限株式」。譲渡を希望する際には、株主は会社に対して「譲渡承認請求」を行う必要があります。

では具体的にどのような流れで譲渡承認請求の手続きを行えばよいのでしょうか?

この記事では譲渡承認請求の基礎知識から具体的な方法について解説します。

1. 譲渡承認請求とは

株式譲渡承認請求とは、譲渡制限がついた株式を譲渡するにあたり、会社に譲渡を承認するか否かの決定を請求するものです。

譲渡制限株式は、会社の承認なしに株式を第三者に譲渡できないため、譲渡を希望する場合には譲渡承認請求を行わなければなりません。

2. 譲渡承認請求手続きの流れ

では、譲渡承認請求を行う際に必要な手続きとはどのようなものなのでしょうか。流れに沿って解説します。

2-1. 株主による譲渡承認請求

株主が会社に対して譲渡承認請求を行う際には、「株式譲渡承認請求書」と呼ばれる書類を提出することが一般的です。株式譲渡請求書の冒頭に譲渡の承認を請求する旨を記載した後に、次の項目を記載します。

① 譲渡を希望する株式の数(※会社が種類株式を発行している場合には、譲渡を希望する株式の種類及び数)

② 譲渡する相手方の氏名又は名称

以上のほか、譲渡人の「名前・住所」を記載し、押印します。

なお、株式譲渡承認請求書の作成には注意点が2点あります。
1点目は、書面に「不承認の際の対応」を明記しておくことです。
会社が株式譲渡を不承認とした場合、譲渡人が請求書に特に何も記載していなければ、それ以上手続は先に進みません。しかし譲渡人が、「不承認の場合、会社又は会社が指定する第三者で、当該株式を買い取って欲しい」という趣旨を記載しておくと、後述する買取の手続に進むことになります。よって、以上の趣旨も株式譲渡承認請求書に記載しておくことが、一般的には望ましいでしょう。

記載例:貴社が承認をしない場合は、貴社又は貴社が指定する買取人が当該株式を買い取ることを請求します。

2点目は「実印」についてです。特に法律で実印による押印が定められているわけではありません。しかし実印は印鑑証明書を添付することで、本人が押印したことを強く証明するものになります。そのため書類に捺印する印鑑は、本人の意思であることが確認できる実印が望ましいでしょう。

2-2. 株式譲渡の承認・不承認の決議

譲渡制限株式における譲渡の承認は、原則として、取締役会設置会社の場合は取締役会、それ以外の会社の場合は株主総会で決定されます。

2-3. 株式譲渡の承認・不承認の決定と株主への通知

会社は承認・不承認を決議のうえ、譲渡承認請求があった日から2週間以内に請求者に対して通知を行う必要があります。2週間以内に通知が行われなかった場合は、譲渡の承認が決定されたものとみなされます。

株式譲渡の承認通知を受けると、その株式譲渡は、会社との関係でも有効に扱われることになります。

3. 譲渡承認請求が不承認の場合

では譲渡承認請求が不承認となり、かつ譲渡人が「不承認の際の買取請求」をしていた場合はどうなるのでしょうか?それぞれ2通りの流れを解説します。

3-1. 会社(株式発行会社)による買取

会社が株式を買い取る場合は、株主総会の特別決議において「買い取る旨」および「買い取る株式の数」を決定します。

買い取ることが決定したら、譲渡承認を求めた株主に対して株式を買い取る旨と買い取る株式数を通知します。加えて、会社は1株当たり純資産額に買い取る株式数を乗じて得た額を本社所在地にある法務局などの供託所に納め(供託)、供託を証明する書類を株主へ交付しなければなりません。

なお、不承認通知を受けた日から40日以内に上記の買取通知及び供託を証する書面が届かなかった場合には、株式譲渡が承認されたものとみなされます。

3-2. 指定買取人による買収

指定買取人が買取を行う場合は、取締役会設置会社であれば取締役会の決議、それ以外の会社であれば株主総会の決議によって買取が決定されます。指定された買取人は、譲渡承認を求めた株主に対して、「株式を買い取る旨」、「買い取る株式の数」を通知しなければなりません。

さらに指定買取人も、会社が買い取るケース同様に、本社所在地の供託所にて一株当たり純資産額に買い取る株式数を乗じて得た額を供託します。加えて、供託の証明書を株主に交付します。

なお、買取不承認の通知から10日以内に上記の通知及び供託を証する書面の交付を行う必要があります。

4. 売買価格の決定

譲渡承認請求が不承認とされた株式は、会社もしくは指定買取人によって買い取られる際、どのように売買価格が決定されるのでしょうか?

4-1. 譲渡請求者と会社または指定買取人での協議

株式の売買価格は、まず会社もしくは指定買取人と株主との協議によって決定します。

4-2. 裁判所に対する申し立て

協議で売買価格が決まらない場合は、裁判所に申し立てを行います。商事非訟事件として扱われ、最終的には申し立てを受けた裁判所が売買価格を決定することになります。

4-3. 裁判所に対する申し立てをしない場合

裁判所への申し立てが可能な期間は、株式の買取通知を受けてから20日以内です。期間内に申し立てがなく、なおかつ協議が成立しなかった場合は、1株あたり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額(=供託された額)をもって売買価格となります。

5. まとめ

譲渡承認請求は書類の作成や承認後の契約締結および不承認後の売買価格の協議など、いくつかの手続きが必要です。専門的な知識は必要不可欠となりますので、専門家のアドバイスやサポートを受けて進めることをおすすめします。

さくら共同事務所では随時相談を受け付けています。譲渡制限株式の譲渡をご検討されている方は、ぜひこの機会に専門家への相談を検討されてみてはいかがでしょうか。

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様々な難事件、大事件への対処を得意としており、強大な敵や困難にも立ち向かい成果を挙げ続けた実績のある「逆襲弁護士」です。

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