もう会社のいいなりではない!少数株主権一覧

更新日:2022年2月21日 株式売却, 非上場株式
河合弘之

監修弁護士
河合 弘之

もう会社のいいなりではない!少数株主権一覧

一定以上の株式保有者が権利行使できる「少数株主権」。帳簿閲覧、株主提案、取締役の解任など、株式の保有割合に応じ、経営を監視する権利があります。

今回は「少数株主権」の具体的な内容や、一株のみ保有する株主であっても権利行使できる「単独株主権」との違いについて、くわしく解説します。

1. 少数株主権の用語説明

ここでは、少数株主権を理解するうえで知っておくべき用語を説明します。

1-1. 議決権

「議決権」とは、株主総会に参加して議案への賛否の意思表示が行える権利です。議決権は1人1票ではなく、保有株数によって与えられています。

例えば2/3以上の議決権を有していれば定款の変更や合併などが可能です。また1/2を超える議決権保有で取締役の選任・解任も行えます。

1-2. 単独株主権と少数株主権の違い

少数株主権と同様に、株主が会社の経営に参加できる権利のなかに単独株主権があります。

少数株主権は権利行使のために一定割合又は一定数以上の議決権が求められます。一方で単独株主権はたとえ1株の所有でも権利行使が認められます。

2. 単独株主権一覧

単独株主が行使できる権利は以下の通りです。

保有期間の要件
要件なし 株主総会の議案提案権(会社法304条)
議決権(会社法308条)
株主総会決議取消しの訴えの提起権(会社法831条)
募集株式の発行等の差止請求権(会社法210条)
募集新株予約権の発行差止請求権(会社法247条)
会社の組織に関する行為の無効訴権(会社法828条)
取締役会の招集請求権(会社法367条)(監査役設置会社又は委員会型の会社を除く。)
定款の閲覧等請求権(会社法31条2項)
株主名簿の閲覧等請求権(会社法125条2項・3項)
株主総会議事録の閲覧等請求権(会社法318条4項)
取締役会議事録の閲覧等請求権(会社法371条2項・3項)(ただし監査役設置会社・委員会型の会社は裁判所の許可が必要)
計算書類の閲覧等請求権(会社法442条3項)
組織再編に関する書類等(事前開示書類等、事後開示書類等)
行使前6か月 株主代表訴訟提起権(会社法847条)
取締役・執行役の違法行為の差止請求権(会社法360、422条)

※非公開会社では保有期間の要件は不要

3. 少数株主権一覧

少数株主が行使できる権利とその要件は以下の通りです。

議決権数・株式数の要件 保有期間の要件
総株主の議決権の1%以上または300個以上 行使前6か月 取締役会設置会社株主の議題提案権、議案の要領記載請求権(会社法303条・305条)
総株主の議決権の1%以上 行使前6か月 総会検査役選任請求権(会社法306条)
総株主の議決権の3%以上または発行済株式総数の3%以上 要件なし 会計帳簿閲覧請求権(会社法433条)、検査役選任請求権(会社法358条)
総株主の議決権の3%以上 要件なし 役員等の責任免除に対する異議権(会社法426条7項)
総株主の議決権3%以上または発行済株式総数の3%以上 行使前6か月 役員・清算人解任の訴えの提起権(会社法854条・479条)
総株主の議決権の3%以上 行使前6か月 株主総会招集権(会社法297条)
総株主の議決権の10%以上または発行済株式総数の10%以上 要件なし 解散請求権(会社法833条)

※非公開会社では保有期間の要件は不要

4. 最低限知っておきたい少数株主権

少数株主権を理解するうえで、押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

4-1. 会計帳簿を確認してみよう!

総株主の議決権の3%以上を有する株主は会計帳簿閲覧謄写請求権があります。(会社法第433条)

最近の驚いたエピソードです。創業ファミリーの何代目かのご親族で、役員をしていたが、10年ほど前に会社から追いやられてしまったのだそうです。本家筋に子供がいなかったため、分家の婿養子が後継者として会社の経営にあたったといいます。伝統的な歴史ある会社であったが、どちらかというと古くからの斜陽産業。後継者に人望もなかったことから、会社の売却にむけて動いていたようです。ところがM&Aのプロセスで会社にどうも裏金があることが発覚し、売るに売れなくなってしまった。昭和のテレビドラマじゃあるまいし、毎年送られてきていた決算書はなんなのだ? 利益も安定的かつ継続的に少しはでていたし、配当も微々たるものだがないよりはありがたいと黙っていたと言います。けれども、「あんなに積みあがった純資産以外にまだ隠し金をつくっていたというのか?」と真実を暴くために、是非先生の力を貸してほしいというものでした。それならば会計帳簿閲覧請求をして、事実の確認をしてみればよいではないか。簡単なハナシではないか…と思ったのですが、株主が当然に持つ権利行使さえも、かねてからの人間関係があるがゆえに心理的な抵抗があるものなのかもしれません。

4-2. 少数株主でも株主総会の招集が請求できる!

総株主の議決権の3%以上を6ヶ月前から引き続き有する少数株主は原則として、取締役に対して株主総会の目的事項および招集の理由を示し、株主総会の招集を請求できます。(会社法297条)

しかし招集請求を行ったにも関わらず、遅滞なく招集手続きがなされなかった場合、少数株主は裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集できます。

4-3. スクイーズアウトには要注意!

スクイーズアウトとは、会社の支配株主が少数株主の有する株式を強制的に買い取ってしまうことです。その背景には、少数株主の会社経営への影響を排除する目的などが見られます。

スクイーズアウトの手法はいくつかありますが、支配株主の保有割合が9割を超えると「株式等売渡請求」を行使して、少数株主に対して、当該株式会社の株式の全部を売り渡すよう仕掛けてくるかもしれません。

5. まとめ

経営への影響力は議決権をどれだけ有しているかによるため、少数株主は弱い立場に立たされることが少なくないでしょう。しかし与えられている少数株主権を理解しておけば、会社からの不当な扱いを未然に防ぐことにもつながります。ただし少数株主として企業に対抗することは決して容易なことではありません。深い専門知識と対応力が求められるため、専門家のアドバイスは必須でしょう。

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河合 弘之

様々な難事件、大事件への対処を得意としており、強大な敵や困難にも立ち向かい成果を挙げ続けた実績のある「逆襲弁護士」です。

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