非上場企業の株主が知っておくべき非上場株式を保有するリスク
監修弁護士
河合 弘之
市場での取引が行われない「非上場株式」は、うまく売却できれば利益を期待できる一方で、保有するうえで何ともしがたいデメリットも存在します。
そこで今回は、非上場企業の株主が知っておくべき非上場株式の注意点について解説します。
目次
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1.
非上場企業とは
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2.
非上場株式の持株比率と主な株主の権利は以下の通りです。
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3.
非上場株式を保有する具体的なリスク -
4.
まとめ
1. 非上場企業とは
非上場企業とは、証券取引所への株式公開を行なっていない企業を指します。非上場企業の公開していない株は、「未公開株」と呼ばれ、その流動性のなさから思ったタイミングで自由に売買ができないのが特徴です。
また非上場株式は持株比率が上がれば経営に対して大きな影響力を行使できる反面、譲渡において制約があったり、売却にはさまざまな困難が伴ったりするケースが多く見受けられます。
2. 非上場株式の持株比率と主な株主の権利は以下の通りです。
非上場株式の持株比率と得られる権利
持株比率 | 株主の権利 |
---|---|
1%以上 | 取締役会設置会社における株主総会の議題提案権 |
3%以上 | 株主総会の招集請求権、会計帳簿の閲覧及び謄写請求権 |
1/3超 | 株主総会の特別決議を単独で否決する権限 |
1/2超 | 株主総会の普通決議を単独で可決する権限(取締役の選任決議、解任決議を含む) |
2/3以上 | 株主総会の特別決議を単独で可決する権限(会社法309条2項)(事業譲渡等の承認(会社法467条1項)を含む) |
3. 非上場株式を保有する具体的なリスク
では具体的に非上場株式保有に伴うリスクにはどんなものがあるでしょうか?
3-1. 非上場株式は買い手がつきにくい
株式を自由に売買できる市場が形成されている「上場株式」に対して、「非上場株式」は市場がないため、株式を売りたい人が自ら買主を探す必要があります。そのような流動性に欠けた財産の買い手を探すのは非常に困難です。さらに買い手が見つかったとしても、株式譲渡(売却)に制限がかけられているため、発行会社に対して法的に正しい手続きを踏む必要があります。
3-2. 株主だからと言って配当を受けられるとは限らない
非上場株式は取引市場がないため、非上場株式により利益を享受する方法は、会社から剰余金の配当を受け取るか、第三者に売却するかのいずれかのケースが考えられます。
しかし剰余金の配当は、原則として株主総会の普通決議によって行う必要があります。(言い換えると、株式総会において出席株主の議決権の過半数の賛成が必要です)したがって、支配株主が賛成しない限り、剰余金は配当されません。
3-3. 現金化が難しいのに高額な相続税がかかる可能性も
仮に株の所有者が死亡し相続が発生した場合、株は遺された親族が相続することになります。しかし対象企業の内部留保が積み上げられ、株式評価額が高額になっている場合は、相続税も想定外に高額になってしまうケースもあります。さらに非上場株式は買い手がみつかりにくく、現金化が難しいため、相続税の納税に苦労することも多々見受けられます。
3-4. 少数株主のための経営が行われない
非上場企業では、一部の経営支配株主が独裁的に経営を行なっているケースも存在します。会社の利益が役員報酬や退職慰労金に分配され、少数株主への利益還元が正当に行われないこともあります。
4. まとめ
開かれた市場が存在しない「非上場株式」は、事業承継ができない少数株主にとって相続時に「保有することのメリット」と「保有を継続することによるデメリット」を冷静に判断することが求められる財産かもしれません。また、いざ売却となった場合は、買い手の見つけ方、価格交渉、発行会社との折衷など、さまざまなハードルが待ち受けています。その分野の専門的な知識は必要不可欠ですので、経験豊富な専門家のアドバイスを受けて進めるのが最適でしょう。
さくら共同法律事務所では非上場株式を保有する株主へのサポートを行なっております。相談は随時受け付けておりますので、ぜひお気軽に専門家への相談をご検討ください。
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弊所は非上場株や譲渡制限株の売却ができず苦しんでいる株主へのサポートや、相続税の支払いの為、発行会社へ買取りを打診したが「応じない」「不当に安い価格を提示する」企業への交渉を得意としています。
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この記事の監修者
様々な難事件、大事件への対処を得意としており、強大な敵や困難にも立ち向かい成果を挙げ続けた実績のある「逆襲弁護士」です。