同族会社における少数株主の立場とは?

更新日:2021年12月26日 同族会社
河合弘之

監修弁護士
河合 弘之

同族会社における少数株主の立場とは?

同族会社は特定の個人あるいは法人が支配株主として会社の経営権を握ることから、会社側としては意思決定が迅速にできるといったメリットがあります。

一方で権力の偏った集中は、企業ガバナンスの欠如を招きやすく、経営者による不正が露呈しづらく、暴走を抑制できないといったデメリットも存在します。そこで今回は、同族会社における少数株主の立場から、ありがちなデメリットについて考えてみましょう。

1. 同族会社の定義について

法人税法上の同族会社とは、3人以下の株主等、およびこれと「特殊の関係」にある個人および法人の株主等が、発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している会社などを指します。
なお、「特殊の関係」にある個人および法人とは以下に該当します。

個人の場合

  • 1.

    株主等の親族(配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族)

  • 2.

    株主等と事実上婚姻関係と同様の事情にある者

  • 3.

    個人株主等の使用人

  • 4.

    上記3項目以外の者で、株主等から受ける金銭やその他の資産により生計を維持している者

  • 5.

    上記2から4に該当する者と生計を一にする、これらの者の親族

法人の場合

代表的な類型のみ紹介します。

  • 1.

    同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等の1人が、他の会社の発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合の、その他の会社

  • 2.

    (a)同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等の1人と、(b)上記1の会社とで、併せて他の会社の発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合の、その他の会社

  • 3.

    (a)同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等の1人と、(b)上記1の会社と、(c)上記2の会社とで、併せて他の会社の発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合の、その他の会社

2. 経営者側の立場で考えられる同族会社のメリット

経営を安定して運営したい会社側からの視点で考えると、同族会社には以下のようなメリットがあります。

2-1. 意思決定や実行が迅速に行える

同族会社は、経営者含め関わりの深い人物が決定権を握っている傾向にあります。そのため同じ意向を共有しやすく、意思決定が迅速に行える点がメリットです。

上場企業であれば、多くの人々が議論を重ねて慎重に、透明性の高い意思決定を行うことが求められます。その点、同族会社では、経営権を一極集中させているため意思統一を諮る必要がなく、経営陣がスピーディーに事業判断を行えるでしょう。

しかし、株主側からすれば「経営の意思決定に参加できない」と不満に感じられる場面も多々あるでしょう。しかし、会社側にとっては少数派の意見に耳を貸すまでもなく、自らが望む意思決定を行えるようにすることが目的なため、株主側の不満は致し方のないことなのです。

2-2. 第三者に経営を脅かされる可能性が低い

現経営者が後継者に事業を引き継ぐ「事業継承」は、敵対する役員や競合相手がいる場合はスムーズに進まないばかりではなく、後継者の地位まで奪われてしまう恐れがあります。

しかし同族会社であれば、あらかじめ後継者に経営権を握らせ、部分的に譲渡していくことが可能です。無事、後継者に事業を引き継げることで、長期的な経営改革をスムーズに行えるでしょう。

一方、株主側からすれば、経営の意思決定に影響を与えられないゆえ、提案しても無視されてしまう可能性が高いとも言えるでしょう。

国家の王位の継承や政治の権力闘争、親族経営の後継者争いに限らず、古より承継にまつわる血みどろの争いは枚挙にいとまがありません。「勝つために、邪魔者を排除する」——古来より人間の営みはその連続ともいえます。

会社側が少数株主を締め出す、いわゆる「スクィーズ・アウト」と呼ばれる施策を積極的に打ってくる例もたくさん耳にするようになりました。意のままに会社の決議を行い、少数株主に対して「株式売渡請求」「株式併合」といった手続きを強行されると、何ら法務知識のない個人ではとても太刀打ちできるものではありません。


  • かつて役員として経営陣の一員だったが、退職が近づくにつれて給料を下げられ、結局、退職金を値切られた挙句に持ち株を巻き上げられてしまった。


  • 単に相続した株を保有していた。経営には何ら関与したことはないが、親からの贈与だったし、年金の足しに少額でも配当があるので持っていた。近年、会社から「自己株取得の件」で度々通知がくる。なぜ額面50円に近いような金額なのか?理解はできないが、何とはなしに売ってほしそうだ。父が亡くなって以来、何の縁もないのだが、それでも会社は創業家とゆかりのある私を排除したいのだろうか?それにしても永らく沈黙を続けている静かな株主——サイレント少数株主である私でさえ排除したいとは?会社側の意図は果たしてなんなのだろうか?

    少数株主の皆さん、ぜひ弁護士河合弘之にご相談ください。
    会社は意のままに意思決定し、会社に都合よく万事進むよう通知してきます。相手は強く、そこには当然法務的な知識に基づいた会社側の弁護士がいます。相手側の意図が分からず、法務的な知識なく立ち向かうのはあまりに無謀で丸腰です。私は、あまりに情報格差のある弱者がいいように転がされているのを目の当たりにし、少しでもお力添えできないかと願っています。

2-3. 個人と混同した資産管理をしていても、企業統治が甘く、露呈するのが難しい

同族会社の大きなメリットとして、資産管理に関する決議を思うがままできるという点を考慮する経営者が多いのではないでしょうか。いわゆる公私混同なのですが、株主側にとっては、オーナー社長が私腹を肥やし続けていても抑制することができない、見ているだけしかどうしようもできないというデメリットが生じてしまいます。

3. 同族会社で注意が必要なよくある問題(デメリット)

同族会社には以下のようなデメリットが挙げられます。

3-1. 健全な経営ができない恐れがある

同族会社は、良くも悪くも経営権が一極集中してしまうため健全な経営ができなくなる恐れがあります。経費が私的流用されることも多く、不正の温床になりかねません。また不当な人事も発生しやすいのもデメリットの一つです。
経営陣と特別な関係にあるというだけで、能力に見合わないポストを手に入れたり、逆に経営陣と対立した人物は異動を命じられたりすることもあります。このように権力を不当に利用した人事が行われることで、従業員からの信頼を失い、モチベーション低下につながるケースも見受けられます。

3-2. 節税と称した不正行為が行われやすい

同族会社は、主要な株主が経営者になることが多いため、税金の逃れの不正行為を独断で行いやすい環境にあります。

そのため同族会社は税法で以下のような特別規定が設けられています。

1. 行為または計算の否認
同族会社の行為又は計算で、税負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるとき、税務所長がその行為又は計算にかかわらず、課税標準や法人税額等を計算することができるという規定

2. 役員または使用人兼務役員の範囲の特例
同族会社の使用人のうち、一定の要件を満たし、かつ経営に従事している者は、「みなし役員」として取り扱うものとする規定

3. 特定同族会社の留保金課税
同族会社では、会社に利益が出た場合でも、累進課税を避けるために経営者やその親族への配当を行わず利益を社内に留保しておくことがあります。「特定同族会社の留保金課税」という規定では、特定同族会社が、各事業年度に一定限度額を超えて所得を留保した場合には、通常の法人税とは別に税金を課税するという仕組みを設けています。

ただし、この規定は特定同族会社を対象としています。特定同族会社とは、1人の株主およびその同族関係者が、発行済株式総数又は出資総額の50%超を所有している会社を指します。なおこの規定は、資本金額(又は出資金額)が1億円以下の法人には原則として適用されません。

■話は変わりますが、昨今では事業承継に伴う税制の優遇措置があります。【あくまで事業を承継する立場の方】を対象としたもので、株主全員を対象としたものではありません。一言で表現すると「事業承継が目的の後継者に対しては相続税や贈与税の納税猶予・免除」の措置があるのに対し、少数株主に対しては納税猶予、免除の措置がないのです。つまり、あなたが一握りの会社を継ぐ後継者の立場でないのであれば、実際の相続が発生し、相続税納付期限までに、ご自身でいくら納税すればよいのかを把握し、その準備をする必要があります。保有する少数株式を含めた不動産、預貯金の全てを相続するために、いくら必要なのか?はたまた、少数株式を相続財産から切り離すための手段を検討するのか?お一人で荷が重い課題であれば、専門家の力を借りてみてはいかがでしょうか?

3-3. 同族間での争いに発展することが多い

同族会社は、多くの場合、株主が親族を中心に構成されることがほとんどです。身内が中心となって会社経営ができるメリットがある一方で、親族間の仲違いが生じた場合、会社の運営に支障が生じる以外にも利益の分配をめぐって熾烈な争いが生じることもあります。

4. まとめ

同族会社は、少数の支配株主によって意向を共有しながら会社経営を行えるメリットがある一方で、経営権が偏り、不正が起こりやすい点が挙げられます。同族会社の株を保有する株主にとっては、意思決定に参加できず、経営者の暴走を抑制できない恐れもあります。また同族間でも争いが起きやすく、争いが生じた場合には、裁判上の争いに発展することもあるでしょう。裁判においては、会社法や民法などのさまざまな法律知識が求められます。そのため専門知識を有する弁護士に相談することで、相手方との交渉も有利に行いやすくなるでしょう。

さくら共同事務所では随時メールやお電話にて相談を受け付けています。同族会社の株式売却や相続についてお悩みの方は、ぜひこの機会に専門家への相談を検討されてみてはいかがでしょうか。

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様々な難事件、大事件への対処を得意としており、強大な敵や困難にも立ち向かい成果を挙げ続けた実績のある「逆襲弁護士」です。

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