同族会社とは?その判定基準や知っておきたい注意点を解説
監修弁護士
河合 弘之
「同族会社」というと、親族経営の会社をイメージする人も多いかもしれません。しかし同族会社の定義はそれだけではありません。
そこで今回は、法人税法上における同族会社のおおよその意味と判定基準について解説。同族会社の株主が知っておくべき注意点についてもご紹介します。
目次
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1.
同族会社とは?
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2.
同族会社の判定基準
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3.
同族関係者の範囲 -
4.
事業を承継しない同族会社の少数株主が意識しておくべき留意点- 4-1.評価額が高額になり多額の相続税になることも
- 4-2.同族間での相続トラブル
- 4-3.株主として適切な資料開示を求める必要性
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5.
まとめ
1. 同族会社とは?
同族会社とは、わかりやすく言うと特定の支配株主によって経営権が握られている会社のことです。
具体的には、3人以下の株主等、およびこれと「特殊の関係」にある個人および法人の株主等が、発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している会社などを指します。
法人税法上は、同族会社=親族経営というのではなく、特定の関係にある個人あるいは法人が一定数以上の株式を保有していたり、出資を行っていたりする場合に、その会社は同族会社とみなされます。組織の中心人物によって独占的に支配されやすいため、税制上の特別な措置が設けられているのが特徴です。
2. 同族会社の判定基準
会社の3人以下の株主等、およびこれと「特殊の関係」にある個人および法人(これを「同族関係者」といいます)が、発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合、その会社は同族会社となります。なお、同族関係者の範囲はのちほど詳しく解説します。
例えば発行済株式数が300株の株式会社において、株主構成が以下のような場合は同族会社に該当するか見ていきましょう。
【発行済株式総数:300株】
株主A:90
株主B(A氏の妻):70
株主C:40
株主D:45
株主E:25
その他:30
株主AとBは夫婦であることから、同族関係者に属するため合計します。
上位3位以内の株主グループの持株数
160(A+B)+40(C)+45(D)=245
245株÷300株=81.66%
上位3位以内の株主が占める割合が50%を超えるため、同族会社と判定されます。
3. 同族関係者の範囲
ここでは同族関係者の範囲、つまりは「特殊の関係」に該当する個人および法人について解説します。
3-1. 個人の場合
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1.
株主等の親族(配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族)
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2.
株主等と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
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3.
個人株主等の使用人
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4.
上記3項目以外の者で、株主等から受ける金銭やその他の資産により生計を維持している者
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5.
上記2から4に該当する者と生計を一にする、これらの者の親族
3-2. 法人の場合
代表的な類型のみ紹介します。
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1.
同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等の1人が、他の会社の発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合の、その他の会社
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2.
(a)同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等の1人と、(b)上記1の会社とで、併せて他の会社の発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合の、その他の会社
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3.
(a)同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等の1人と、(b)上記1の会社と、(c)上記2の会社とで、併せて他の会社の発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合の、その他の会社
4. 事業を承継しない同族会社の少数株主が意識しておくべき留意点
同族会社は経営者個人あるいは一族に委ねられることが多く、経営者の代替わりによって、経営方針が大きく変わるというのはよくある話です。社長の代替わりや創業家の断絶、ライフスタイルの変化についていけなくなることで、いつの間にか斜陽産業になってしまった。いずれも同族企業における経営の転換点となりうる事象です。
ここでは事業を承継しない同族会社の株式を保有している株主があらかじめ知っておくべき留意点について考えてみます。
4-1. 評価額が高額になり多額の相続税になることも
例えば長い歴史があり安定した業績を続けてきた未上場の同族会社のなかには、自社株の相続税評価額が高くなることがよくあります。内部留保として利益の蓄積が大きくなるからです。こういった会社の多くは、経営者の代替わりによって会社の経営に影響を与えないよう納税資金の算段はじめ、相続税対策はもちろん自社株対策の周到な準備をします。経営を盤石にするため、過去に分散した株を買い集めようと意識するのもこの頃です。そのため分散した少数株を保有する側としては、このことを念頭において、会社の真意を推し測る必要があります。
また、事業承継は昨今、後継者難により親族間で行われるものとは限らず、従業員や創業家以外の経営陣にバトンを渡すケースも増えてきました。創業家が途絶え、創業者のフィロソフィーが継がれなかった会社——これは何も後継経営者ばかりの責任というつもりはありません——にありがちなのは会社の売却・清算といった流れです。時代に取り残されてしまい、対応が難しいので、M&Aで売却。形があるうちに、不動産など売れる純資産を売却し、会社を清算。その前に創業一族に散らばった少数株を買い集め、現経営陣だけで利益を独占する。どうなのでしょうか?
4-2. 同族間での相続トラブル
相続の際、相続人の間で協議がなされるものの、相続財産の分配をめぐってトラブルになるケースは世に広く存在します。
なかでも同族会社の後継者の場合は、相続財産のうち自社株を確保できなければ事業を支配できず、自由な会社の運営が危うくなります。そのため、相続トラブルを回避し、円滑に後継者に事業を継承するための用意周到な準備が求められます。必要な自社株を相続できるようあらかじめ入念な手続きを行っておくのです。少数株主の皆さんは、気がついたら「現状のどうしようもない境遇に追いやられてしまっていた!」という方がほとんどではないでしょうか?本来は、このような動き・気配が察知されるうちに、是非とも一度でもご相談にいらしていただきたいのです。
完全に会社側の手の内で固められると、法務的知識のない個人ではとても太刀打ちできないと思います。これらの対策は親族の状況や持株割合、全体の株主構成を把握して、プロと一緒に練り上げる必要があります。手の打ちようがあるうちに、会社側が事業継承の意識をもっているフシを感じられたら、専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。
4-3. 株主として適切な資料開示を求める必要性
同族会社は経営者個人や特定の株主によって支配されやすいため、経営の透明性が課題に挙げられます。そのため株主は会社に対するガバナンス向上や適切な経営がなされているか把握できるよう資料開示を要求し、より透明性の高い経営を求める必要があるでしょう。
5. まとめ
同族会社は親族経営の会社というイメージがありますが、法人税法上の「同族会社」は、「持分基準」などの明確な基準が設けられています。同族関係者の範囲も定められているため、必要な知識として備えておきましょう。
実際に相続が発生した場合は、事業を引き継がない少数株主であっても、持ち株比率に応じて相続税を計算する方式が異なります。「自分は会社を継ぐわけではないから関係ないわ」ではなく、会社を継がないからこそ不可避で、かつ大きな影響が生じます。
事業承継をする大株主には、税制の優遇措置がありますが、少数株主に対してのものはありません。だからこそ、あなたは自分自身で考え、備え、心の準備をしておく必要があるのです。
同族会社における事業承継は相続前後のタイミングで対応を検討しておく課題が目白押しです。相続税や贈与税対策のほか、さまざまな観点から慎重に取り扱うべき問題です。お一人ではとても荷が重いため、専門家に助けを求め、早めの対策を講じましょう。
さくら共同事務所では随時メールやお電話にて相談を受け付けています。同族会社の株式売却や相続についてお悩みの方は、ぜひこの機会に専門家への相談を検討されてみてはいかがでしょうか。
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この記事の監修者
様々な難事件、大事件への対処を得意としており、強大な敵や困難にも立ち向かい成果を挙げ続けた実績のある「逆襲弁護士」です。