非上場株の相続税評価をかんたん解説
監修弁護士
河合 弘之
非上場株を相続したら、どのように評価すれば良いのでしょうか?
相続税を正しく計算するには非上場株の「評価」をしなければなりません。税制上、非上場株については3種類の評価方法があり、ケースによって使い分ける必要があります。以下でそれぞれについてみていきましょう。
1. 非上場株の評価方法
非上場株を相続したら、適正に「評価」しなければなりません。非上場株も相続税の課税対象になっているからです。評価額が明らかにならないと相続税を正しく計算できません。
非上場株の評価方法には以下の3種類があります。
・配当還元方式
・純資産価額方式
・類似業種批准方式
以下でそれぞれの計算方法や違いを分かりやすく説明します。
1-1. 配当還元方式
配当還元方式は、株式から得られる配当に注目して株価を評価する計算方法です。具体的には過去2年間の平均的な配当額を10%で割り算し、元本の株価を求めます。
配当還元方式が適用される場面
配当還元方式が適用されるのは、いわゆる「少数株主」が株式を受け取る場面です。相続税製では、同族株主と少数株主とで非上場株の評価方法が分かれています。少数株主の場合、会社への影響力が小さいので配当金の受け取りが株式を保有するメインの意義となるでしょう。そこで配当に注目した評価方法が適用されます。
具体的にいうと配当還元方式を適用できるのは、以下のようなケースです。
・同族株主がいる会社で同族株主以外の株主が非上場株を取得した
・同族株主グループであっても支配力の少ない少数株主
・同族株主のいない会社の株主で議決権割合が15%以上の株主グループがあり、15%以上の株主グループ以外の株主が取得した非上場株
・同族株主のいない会社で議決権割合が15%以上の株主グループがあって中心的な株主がいるところ、本人は中心的な株主でも一定の役員でもない株主として取得した非上場株
配当還元方式はあくまで「少数株主における例外的な評価方法」です。
以下ではより原則的な株価の評価方法を2つ、ご紹介します。
1-2. 純資産価額方式
純資産価額方式と次にご紹介する類似業種批准方式は、原則的な株価の評価方法です。中でも純資産価額方式は、会社の純資産価額を基準にして株価を評価するものです。
具体的な計算方法
純資産価額方式の場合、会社の資産から負債を差し引いた金額を株数で割り算して1株あたりの単価を出します。
まず資産や負債を「相続税評価」にて評価して、資産から負債を引き算します(A)。次に帳簿価額における資産合計額から負債合計額を差し引き、帳簿上の純資産額を求めます(B)。こうして求められるのが含み益(A-B)です。ただしその37%は法人税相当額として差し引きします。
このようにして求められた金額を最終的な純資産額として、発行済株式数で除した金額を非上場株の評価額とします。
純資産価額方式が適用される場面
純資産価額評価方式が適用されるのは、小会社の非上場株を相続したケースです。
1-3. 類似業種批准方式
類似業種比準方式とは、事業内容や規模が似ている他の上場企業の株式の株価を参考に非上場株の株価を求める方法です。比較項目は「配当金額」と「利益金額」「純資産価額(簿価)」の3点とされています。
自社と似た上場株式の評価額と比較して株価を求めるものと理解しましょう。
・類似業種批准方式が適用される場面
類似業種批准方式が適用されるのは、大会社の場合です。
・中会社の株価評価方法
中会社の場合、純資産価額方式と類似業種批准方式を併用して評価を行います。
・会社の規模と株式評価方法についてのまとめ表
2. 最後に
非上場株の評価方法には3種類がありますが、それぞれ適用場面が異なります。
また非上場株を相続すると、遺産相続の手続き自体が複雑になるケースも多く、なじみのない方では対応が困難となってしまいがちです。
また、このリンクで解説しているのはあくまで非上場株を【相続する際の税金の算出方法】であって、非上場株を【売却する際の株価の算定方式】ではありません。相続すべきか?売却すべきか?複数の選択肢があって、それぞれに異なる算定方法と基準があるのがややこしいところです。これらの区分けをきちんと理解したうえで、相続か?売却か?ご当人にとってベストな選択肢を検討し、スムーズに手続きを完了するためには専門家に相談するのも良いと思います。
よければぜひ、ご相談ください。
非上場株の相続について必要な知識はこちらの記事にまとめているので、必要に応じてご参照ください。
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この記事の監修者
様々な難事件、大事件への対処を得意としており、強大な敵や困難にも立ち向かい成果を挙げ続けた実績のある「逆襲弁護士」です。